
photo by RoOobie
すばらしいWork(作品)やTechnica(意匠)を紹介するウェブサイト、ワクテカ@works&technica。当然マンガもその関心の対象になるわけだが、そこはもう1つのキーワード「深追い」である。フツウに日本のマンガを紹介しても仕方がない。
どうせなら「こんな時代だからアクセスできるけど、気軽に手を出すにはちょっとよくわからん」というマンガを「深追い」してみよう。というわけで始まったこの連載では、フランスマンガ研究家の原正人氏が、いまだ知られざるヨーロッパマンガの魅力を第1・第3金曜日にどっぷりと紹介していく。
さて。大友克洋、宮崎駿、谷口ジロー、寺田克也、小池桂一。弐瓶勉や藤原カムイ、松本大洋。荒木飛呂彦なんかを挙げてもいいのかもしれない。こういった作家から、あなたは何を思い浮かべるだろうか?
■「日本の巨匠」の影にヨーロッパマンガあり
これらの作家は、日本マンガにおいて非常に優れた、まぎれもなく傑出した存在でありながら、海外のマンガの影響を受けていたり、少なくともそういったものを想起できたりする作家なのだ。
ただ注意してほしい。最初に挙げた作家についてはかなりの高い確率でそう言えそうだが、リストの後ろに進むにしたがって、検証可能性は低くなる。
大友や宮崎がフランスの作家・メビウス(Mœbius)と親交を結んでいることは有名だが、松本大洋がどれだけ海外マンガの影響を受けているのか、自信を持って発言はできない。

Moebius
松本はさるインタビューであんなによく似ている(もちろん悪い意味ではなく)ホセ・ムニョス(José Munos)を知らないと言っていたし…… ただ、松本に関してはメビウスの影響はかなりありそうだ。
この国は海外マンガにとっては砂漠に等しい。
だが、実は海外マンガの芽がそれとわからぬ形で育っているのである。
■日本のマンガが好きなら、海外のマンガを読むべき!
若い世代の海外マンガ作家が名を連ねている『GELATIN(ゼラチン)』(ワニマガジン)や『少年之國』、『少女世界』(ともに飛鳥新社)を読めば、その影響が日本マンガの伝統とマッシュアップされ、隔世遺伝的に現れているのがわかるだろう。
さきのアーティストたちが新しいもの、面白いものに敏感なのは当然かもしれないが、僕らも彼らの楽しみを共有したいものだ。

GELATIN(ワニマガジン)
海外における日本マンガ人気が盛んに報道される今、日本マンガを消化したすばらしい描き手が海外から出てくる可能性はかなり高い。僕たちはそろそろ「日本マンガが海外でウケている」と無邪気に喜ぶだけじゃなく、海外マンガそのものにも目を向けるべきなのだ。

少女世界(飛鳥書房新社)
もちろん海外マンガと言ってもいろいろある。
日本と並んで市場が大きいのはアメリカとフランスだが、それ以外にもいろんな国にいろんなマンガが存在しているはずだ。アメリカのコミックスだって、とてもひとくくりにできるようなものじゃない。小田切博の『戦争はいかに「マンガ」を変えるか』(NTT出版)を読めば一目瞭然だ。
この連載ではフランス語圏のマンガ、バンド・デシネ(Bande Dessinée、フランス語で「コマ割り漫画」の意)を中心に話を進める。もちろん必要に応じて他国のマンガに言及するし、バンド・デシネとかアメコミとかといったくくりにこだわらず、日本語訳されたマンガについては紹介するつもりだ。
■まずは飛鳥書房新社「ユーロマンガ」なんていかが?
さて、これから海外マンガの大洋に繰り出そうという僕らにうってつけの雑誌が昨年9月に発売された。日本初のバンド・デシネ翻訳誌『ユーロマンガ』(飛鳥新社)だ。僕自身がこの雑誌に関わっているので宣伝めいて恐縮だが――というかぶっちゃけ宣伝なのだが(笑)――あえて紹介させていただこう。

ユーロマンガ(飛鳥書房新社)
収録されているのは、カネパ&バルブッチの『スカイ・ドール』、マリーニ&デュフォーの『ラパス』、ガルニド&カナレスの『ブラックサッド』、ニコラ・ド・クレシーの『天空のビバンドム』という連載4作品。それぞれが絵柄もストーリーも個性的で、バンド・デシネの多様性を知るのにもってこいだ。
言いたいことは山ほどあるが、スペースも限られているので、ここは我慢…… どの作品も注目だが「ニコラ・ド・クレシーの絵にゃ驚くぜ!」とだけ言っておこう。
そうそう、そもそもバンド・デシネって何よというあなた、そんなあなたにはぜひ「ユーロマンガの世界へようこそ」という巻頭記事を読んでいただきたい。バンド・デシネが日本マンガとかなり違うことがわかっていただけるはずだ。
この3月には待望の同誌第2号も発売された。おそらく日本初ではないかと思われるイタリア・マンガの通史「煙(Fumetto)の行方」という記事、バンド・デシネのスーパースター、メビウスとエンキ・ビラル(Enki Bilal)を紹介する記事も載せられている。

ユーロマンガ vol.2(飛鳥書房新社)
メビウスとエンキ・ビラルは日本でもよく知られたバンド・デシネ作家。なんとも都合のいいことに、後者エンキ・ビラルの新作がつい先ごろ3月11日に発売されたばかりだ。読みたくてウズウズしているという人もいるに違いない。そこで次回の連載ではエンキ・ビラルの新作『アニマルズ』(Animal’z)を取りあげたいと思っている。
■関連サイト
・ユーロマンガ
・1000planches(ミル・プランシュ)
・MBD(マベデ)
・ワニマガジン社『GELATIN』
text by 原正人






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