
##「米沢嘉博記念図書館の謎を探る」前後編
4月9日 「森川嘉一郎が語る、マンガ図書館設立の理由」(前編)
4月10日 「米沢嘉博記念図書館、ジャンプの山を整理中」(後編)
マガジンとサンデーが50周年を記念し、共同企画を張っている。
今から50年前の1959年、週刊文春やシャルル=ドゴール政権とともに生まれた2誌はいずれも、オタク・サブカルチャー文化を牽引しつづけている。
50年に渡る「マンガ」なるグラフィックアートの消費史は、もはや学問としての位置が確立されつつある。マンガを智として、学部として扱う大学も増えてきた。
そんな中、明治大学が「米沢嘉博記念図書館」の設立を発表した。7階建ての敷地にコミックマーケット準備会前代表を務めた故・米沢嘉博氏の蔵書などをアーカイブするものだ。
漫画の図書館という意味では、これまでも京都精華大学と共同した京都国際ミュージアムなどの導入例があるが、そこに明治大学が入ってきたのはどんな理由があるのだろう。
今回、図書館の企画から推進役を担ってきたのは秋葉原やおたく文化の研究で知られる森川嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)。本稿前編ではまず同氏に逢い、設立秘話を伺ってきた。

■発端は5年前のヴェネツィアだった
「マンガ図書館の発端は、2004年のヴェネツィア・ビエンナーレだった」と森川さんは語る。
ヴェネツィア映画祭などで名の知れたアートイベントになぜマンガ図書館が関わってくるのか疑問を投げかけると、森川さんは続けた。
「日本館の展示構成をまかされ、“おたく”をテーマにしたんです。作品や商品といったモノではなく、おたくの人々のライフスタイルや価値観を前面に据えるというコンセプトを立て、おたくの個室や秋葉原を模型にしたり、レンタルショーケースを再現したりしました。米沢さんが代表を務めていたコミックマーケット準備会にも、コミックマーケットの箱庭模型の制作と展示をお願いしました」。

写真の“おたく展”は、ヴェネツィアでの反響を見た東京都写真美術館にも巡回。その後、4トントラックに6台分もの容量になる大量の展示物をどのように保管するのかという問題があらわれた。
そのとき持ち上がったのが、“おたく展”を要素の一つにして、おたく文化の常設的なアーカイブ施設の設立を目指すという考え方だ。
「まずはマンガ誌などの膨大なコレクションを管理されている米沢嘉博氏と内記稔夫氏の両名に相談したんです。米沢氏には以前から図書館を作りたいというお考えがあり、内記氏はすでに私設のマンガ図書館を運営されているものの、増え続ける蔵書のための空間をどうするかという問題をお持ちでした。
両氏とお話をさせて頂くうちに、私の中で“おたく展”の保管はもはやきっかけに過ぎなくなりました。両氏がお持ちのような貴重な個人コレクションなどを複合的に保存できる施設の設立に向けて、各方面に働きかけて行くようになりました」。
■国会図書館を補完する「マンガ・アニメ・ゲームのアーカイブ施設」を
マンガ・アニメ・ゲームのようなサブカルチャーは、大学や図書館のような公共施設ではこれまでほとんど収集されてこなかったため、主に個人蒐集家が保存を担っているのが現状だ。しかしそうしたコレクションは、コレクターが他界したりすると遺族にとってはゴミとみなされることが多く、とたんに散逸の危機に瀕する。
すべての出版物が納本されているはずの国会図書館ですら、この分野は欠本が目立つ。アニメやゲームについても、スタジオやメーカーから原画類や筐体が散逸してしまっているケースが多い。個人コレクションを複合保存する施設ができれば、そうした資料を救える可能性は高まってくる。
「そのような主旨の計画案をつくり、色々な方々に応援して頂いて自治体などに働きかけたのですが、進展がないまま2006年に米沢氏が他界されました。そうした折に、明治大学から“2008年に国際日本学部という新学部を開設する、マンガやアニメなどの現代文化を扱うので相談に乗ってほしい”と打診されたんです。
自己紹介がてら計画案をプレゼンしてみたところ、ちょうど高校の校舎くらい大きさの建物が空くというのです。ただ、この規模の計画を一気に実施するには数年の時間を要するので、まずは800平方メートルくらいの建物で、第一弾となる先行施設をつくることになりました。
それが、2009年夏の開館に向けて作業を進めている「米沢嘉博記念図書館」です。明大出身者でもある米沢さんの、マンガから各種サブカルチャーにまたがる蔵書の提供を受け、設立されるものです。そして、ここを起点に、“東京国際マンガ図書館”と仮称している大規模なマンガ・アニメ・ゲームの複合アーカイブ施設を準備しています」。
##「米沢嘉博記念図書館の謎を探る」前後編
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