
Arthur de Pins 「Petits Péchés Mignons」
## 原正人の「なぜ私はヨーロッパマンガを愛するようになったか」
「こんな時代だからアクセスできるけど、気軽に手を出すにはちょっとよくわからん」というマンガを深追いする連載企画。フランスマンガ研究家の原正人氏が、いまだ知られざるヨーロッパマンガの魅力を隔週金曜日にどっぷりと紹介していく。
今回は今まで紹介してきた作家たちとは趣きを異にする若い作家を紹介したい。
彼の名前はアルチュール・ド・パンス(Arthur de Pins)、1977年生まれの32歳。アニメーションを学び、イラストレーターを経て、今現在はバンド・デシネも精力的にこなす男性作家だ。彼の仕事はまだまだ日本では広く知られていないが、この夏に日本を訪れた彼からいろいろと話を聞くことができた。
■「パワーパフガールズ」風のポップなイラストだけど、セックスシーンも出てきます

頭が大きく目のパッチリしたキャラクターが特徴的で、その作風は日本のマンガ・アニメの影響を強く感じさせる。実際、マンガ・アニメ、さらにはテレビ・ゲームから受けた影響をはっきりと認めている。
彼が描くイラストレーションやバンド・デシネはきわどいテーマを扱ったものが多い。セックスシーンがあけすけに描かれていたりもする。だが、爽やかな色を使っていることや登場人物たちがあっけらかんとしていることもあって、絵にいやらしさが感じられない。
フランスでは、バンド・デシネはまだまだ男性ファンのものという通念があるのだが、彼の作品には女性ファンも多いのだとか。

現在、フリュイド・グラシアル(Fluide Glacial)という出版社から『かわいい罪』(Péchés Mignons)というバンド・デシネを刊行中だ。単行本が既に第三巻まで出ていて、年内には第四巻も出版される予定。
内容はアルチュールという青年の日常を女性遍歴中心にユーモアを交えつつ描いた作品だ。日本のマンガに比べると生真面目な印象のあるバンド・デシネの中にこのような作品を発見するのは楽しい。
なお、第二巻の途中からはクララという女性主人公も登場し、今度は彼女の男性遍歴も描かれるようになる。彼女の話を考えるに当たって、物語によりリアリティを与えるために、アルチュールはマイア・マゾレット(Maïa Mazaurette)という女性の原作者を迎えている。
■アニメ作家としての手腕も高評価 最新作は「カニ革命」
作家としてはまだまだキャリアが浅く、『かわいい罪』とその再編集版である『小さなかわいい罪』(Petits Péchés Mignons)を除けば、作品は存在していない。一方、アルチュールの原点であるアニメーションについては、既に高い評価が与えられている。
最新作は2004年の『カニ革命』(la Révolution des crabes)。この作品は2004年度のアヌシー国際アニメーション・フェスティヴァルで、観客賞を受賞している。5分ほどの短いアニメーションだが、いかにもフランス的な気の利いた作品である。
なんでも目下この作品を劇場用長編アニメーションにすべく活動中なのだとか。タイトルは『カニの歩み』(La Marche du crab)になる予定。さらには、アニメーションの企画に合わせてバンド・デシネ版を作る企画も浮上中だそうだ。
それ以前の作品、『ジェラルディン』(Geraldine、2000年)と『センチメンタル』(Eau de Rose、2003年)も、それぞれ魅力的な作品である。個人的には『センチメンタル』がお気に入りだ。前者はフランス語のセリフが一切ないアニメーションで、字幕がなくても気兼ねなく見ることができる作品である。ぜひチェックしていただきたい。
今回はアルチュールにとって二回目の来日だったのだが、すっかり日本が気に入ったようだ。また近い内に、今度は彼の作品の邦訳のニュースを携えて、帰ってきてほしいものだ。
text by 原正人
## 原正人の「なぜ私はヨーロッパマンガを愛するようになったか」
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