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真っ赤な部屋に泊まるという「芸術」―― 大地の芸術祭2009レポート@屋内【後編】

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マリーナ・アブラモヴィッチ / 「夢の家」
 いよいよ明後日が最終日となった「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009」。4回に渡って続けてきたレポートもこれでいよいよ最終回。廃校となった学校や、空き家になった古民家を舞台に作られた作品を紹介していこう。

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マリーナ・アブラモヴィッチ / 「夢の家」
 はじめは冒頭にも写真を載せた、色ガラスを窓に入れた古民家。フィルターをかけたわけでも、レタッチをかけたわけでもありません。赤、青、緑、紫とそれぞれのカラーに染まった部屋に分かれたこの家は宿泊施設になっている。部屋の真ん中に置かれた棺桶で眠って夢を見る、その体験そのものが作品になるというもの。

マリーナ・アブラモヴィッチ / 「夢の家」
 そこで見た夢を記録するノートも置かれ、自由に閲覧できるようになっている。夢は自分でも他人の記憶を覗き込んでいるような不思議なもの。「サザエさんの夢。波平の様子がおかしく、タラとイクラに『本気でフネのことを愛しているんだ』と告白する」など、ていねいに記録された夢を読んでいくのはおかしく、どこか果てしない気分になる。

蓬平 / 「いけばなの家」
 つづいては、家中にいくつもの作品をちりばめた「いけばなの家」。ここではとりわけ目立った作品だけを紹介するが、本当はもっともっと美しい作品があるのでじっくり見てまわってほしい。

蓬平 / 「いけばなの家」
 まず外観を見て、「生け花」が民家から張り出しているのに口が半開きになる。急なカーブを描いてしなる竹が力強く、アンテナのように伸びている様にちょっと笑ってしまった。

蓬平 / 「いけばなの家」
 光と影の穏やかなコントラストを生かした作りの室内、しんとした空気に背筋がぞくぞくする。ここで作られた作品のテーマは「協同」。ふつうは個の世界で作られる生け花が、だれかとのコミュニケーションを核に変化していく。

蓬平 / 「いけばなの家」
 外にも飛び出していたしなりのある竹。節できゅっとむすばれた赤い布のこぶが、青竹の表面にちいさな影を落とす。生命の動きをそのまま「生けた」ような、いまにもすぽーんと飛び出していってしまいそうな、それでいて静かな作品。ぼくはこれが一番好きだった。

アントニー・ゴームリー / 「もうひとつの特異点」
 前編で紹介した「家の記憶」と同じく、家の中をことごとく線で切り分けた作品。家の記憶が毛糸で出来ていて、触れること、縒れば着られるあたたかなものを素材にしていたのに対して、こちらはワイヤー。それも壁や家具など、人の息づかいが感じられるすべては取り払われた、骨組みだけの空間だ。そのぶん神聖でさえある、無機質なぴんと張り詰めた空気に胸が緊張する。特異点(シンギュラリティ)とは宇宙のはじまりのこと。むきだしの黒い家に浮かぶワイヤーは、星座を結んだ線のように敬虔に美しい。

クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン / 「最後の教室」
 電球や蛍光灯を中心に、「本当ならそこに人がいた」ことをあらわす作品が並んだ廃校の校舎。写真はガラスケースのベッドに、蛍光灯のまくらが並んだもの。蝉の抜け殻みたいに魂の入れものがしらじら光っているような気がする。裸電球の下がった廊下を歩いていると、自分自身を見つめなおす本当の「内省」が出来るような気がする。

松澤有子 / 「enishi」
 最後は、廃校になった赤倉小学校に残った脚立や一輪車をまちばりで覆った作品。大きなくもの巣がきらきらと輝き、まち針の頭が露のように光る。まち針をテグスに通す作業は地元の人々と一緒におこなったもの。enishi、縁とは永遠のものだけれど、それを感じられるのは本当に一瞬のこと。主のいないくもの巣は、廃校の残された記憶の抜け殻のように、切なくて、あたたかくて、涙がにじむほど美しい。
■アート好きならこちらの記事もどうぞ!
・新潟には光学迷彩の古民家がある!?―― 大地の芸術祭2009レポート@屋内【前編】
・巨大な色鉛筆が落っこちてきそうな森―― 大地の芸術祭2009レポート@野外【後編】
・田んぼの中から巨大な帆船が出航?! ――大地の芸術祭2009レポート@野外【前編】
・アートフェア東京2009のすごい作品
・六本木はアート・シティの夢を見るか?
■関連サイト
・越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009

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新潟には光学迷彩の古民家がある!?―― 大地の芸術祭2009レポート@屋内【前編】

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行武治美 / 「再構築」
 先週にもお伝えした、「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009」で見つけた面白い作品の数々。先週は野外に置かれたオブジェや立体などを中心に書いてきた。今週は屋内にある、または「家」そのものをテーマにしたアート作品を紹介する。
 人の少ないしずかな集落に佇む、古民家を使ったアートもこの芸術祭の大きな特徴。地元の生活や記憶、芸能に根ざした作品は、環境とともに変わる美しさもあれば、変わらない美しさもあることを再確認させてくれる。
 というわけで、はじめに紹介するのはまるで光学迷彩のような家から。

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行武治美 / 「再構築」
 家の内外全面に、大小様々な円形の鏡が貼られたもの。内側の鏡は一部やわらかな針金で固定されており、風に吹かれると光とともに揺れる。太陽の光を乱反射し、周囲に白い光を散らしていくのだ。鴻池朋子さんの「惑星はしばらく雪で覆われる」も美しかったけど、こちらも見とれてしまう。

 つづいては古民家を使った塩田千春さんの「家の記憶」。外側からは実際の古民家にしか見えず、ひとまずは入ってみるしかない。

塩田千春 / 「家の記憶」
 一歩入ると、家の中は一面が黒い毛糸でクモの巣状にびっしりと覆いつくされている。ドアも、本棚も、空中も何も関係なく、すべてに黒い影が張りめぐらされる。

塩田千春 / 「家の記憶」
 掲題どおり、わたしたちのように家の外にいる人はまったく知らないはずの記憶を共有しているような気分になる。それは後ろ暗いものではなく、あたたかく、やわらかな闇のようなもの。人が家に暮らすというのは、おそろしく生々しいものだ。琴線にふれるような張り詰めたものというより、お互いの毛糸にふれあうようなものなのかもしれない。

澤清嗣 / 「風呂」(「うぶすなの家」内)
 こちらは場所を変えて、陶磁器作品を満載した「うぶすなの家」より、鉛釉による浴槽の作品。焼成するとあざやかな緑色になる、信楽焼の特徴である緑釉をかけているものという。澤さんの家は代々続く焼き物しごとの家系。

ドロテー・ゴルツ / 「コーヒー・セレモニー」
 いくつものコーヒーカップが溶け合い、一杯のコーヒーがそそがれる。ふすまや縁側のように開放的な、日本のコミュニケーションがあらわれているようだ。ドロテー・ゴルツ(Dorothee Golz)さんはオーストリアの作家。立体をはじめ、デューラーの自画像に自分の顔をCGであてた絵画なども製作しているとても面白い方。

ドロテー・ゴルツ / 「コーヒー・セレモニー」
 コーヒーをいただき、この「溶けた」コーヒーカップを持って記念撮影するのがこの「コーヒー・セレモニー」プロジェクト。喫茶(茶室)という日本の所作と、コーヒーというヨーロッパの文化が溶け合ったらどうなるか。

 最後には、コーヒー色の絵の具で習字をすることでプロジェクトはおしまいになる。いやー、この字の汚さ…

古巻和芳+夜閒工房 / 「繭の家─養蚕プロジェクト」
 最後はふたたび場所を変えて、絹糸の元となる繭玉を使った作品。3年前の2006年にはジオラマなどの作品を作り、今回はそれを発展させた形で繭グッズなどが作られている。繭玉は裏側からライトが当てられ、まばゆく明滅を繰り返す。日の光を見ているよう。

古巻和芳+夜閒工房 / 「繭の家─養蚕プロジェクト」
 窓辺には光のシャワーのような形で繭玉が斜めにかかっている。外から射し込む白い光と繭玉の白さが、古民家の濃い暗がりの中にぼうっと浮かんでくる。ぴんと張り詰めた、しずかな光と影の美しさ。

古巻和芳+夜閒工房 / 「繭の家─養蚕プロジェクト」
 これがすべて繭玉。ジリジリというランプの音がどこか生々しく、ため息が出るほど美しい。手前にある行李のようなものを開けると明かりは消え、中の真っ白なジオラマが光る。メディアアートというのは、対象がナマっぽいほどに美しくなるものなんだなと逆説的なことを考えさせられる作品。
 (記事は後編につづきます)
■アート好きはこちらもどうぞ!
・巨大な色鉛筆が落っこちてきそうな森―― 大地の芸術祭2009レポート@野外【後編】
・田んぼの中から巨大な帆船が出航?! ――大地の芸術祭2009レポート@野外【前編】
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・六本木はアート・シティの夢を見るか?
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・越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009

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巨大な色鉛筆が落っこちてきそうな森―― 大地の芸術祭2009レポート@野外【後編】

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パスカル・マルティン・タイユー / 「リバース・シティ」
 いよいよ来週13日までの開催となった「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009」。秋版の開催も告知されているけど、メインの全作品が鑑賞できるのは夏の会期だけ。JRの土日きっぷと駅レンタカーを併用し、最終日まで楽しんでみては。
 それでは前編につづいて、野外展示の面白かった作品をずらずらと並べてみる。

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パスカル・マルティン・タイユー / 「リバース・シティ」
 はじめは、冒頭にも写真を掲出した巨大な色鉛筆。1本ごとに国名が示されており、国はいずれも小国ばかり。色鉛筆でイメージするのは、子どもと学校。鉛筆1本の重さは命の重さをあらわしているのかもしれない。

田中信太郎 / 「○△□の塔と赤とんぼ」
 つづいてはやはり巨大な赤とんぼ。どんどん先細って行く搭の突端に、ヤジロベエのようなバランスで立つ。歌にもあるようにノスタルジーをさそう赤とんぼも、ここまでスマートになると都市的だ。大きく羽を広げた姿は十字架のようにも見え、なんだか祈りを捧げたくなる。

山本健史 / 「掃天帯土 -天水越の塔-」
 巨大物は続く。作家が地元の人々とともに作り上げた焼き物を約8メートルのタワーにしたもの。中には、好きな人の顔をかたどったものなど、思わずにやにやしてしまうようなものも。大地にどすんと根をおろした、芸術の搭だ。

シモン・ビール / 「今を楽しめ CARPE DIEM」
 CARPE DIEMは大好きなラテン語。がんこなマイナス志向が凝りかたまったぼくには永遠の憧れになりそうだけど。ともかく、森の中のあずまやに突如ポツンとあらわれるのは、6台の旧式冷蔵庫。中を覗いてみると…

シモン・ビール / 「今を楽しめ CARPE DIEM」
 夏なのに雪だるま。会期が終わったら溶けてしまうという。せっかく今を生きているのだから、その短いきらめきを大切に生きていこう、ということなのだと思う。

大西治・大西雅子 / 「ゲロンパ大合唱」
 かわいいな巨大カエルのオブジェ。コンポストになっていて、畑をたがやしていて出た雑草などをまとめて堆肥にできるというもの。足元のタイヤでゴロゴロ移動するのである。里山に根ざした共同体的アートだ。

鈴木りんいち / 「蟻について」
 今度は巨大な蟻。蟻そのものではなく「蟻について」とタイトルにあるとおり、ここまで巨大なのにどこから見ても蟻らしさに遜色なし。

國安孝昌 / 「棚守る竜神の塔」
 巨大さはほぼピークに。圧倒的な迫力をなんとか伝えようと頑張って、結果がこの写真という。残念すぎて泣きそう。レンガと丸太を組んで作り上げた、途方もなく大きな竜の搭。きのこが自生していたりしている。生けるファンタジーだ。
■アート好きはこちらもどうぞ
・田んぼの中から巨大な帆船が出航?! ――大地の芸術祭2009レポート@野外【前編】
・アートフェア東京2009のすごい作品
・六本木はアート・シティの夢を見るか?

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田んぼの中から巨大な帆船が出航?! ――大地の芸術祭2009レポート@野外【前編】

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スタシス&コウォジェイスキ、ヴィタシェフスキ(A+D) / 「訪問者」
 シェフェールにアングルにコニエ、ビュフェにクレー。靴音立てて美術館を歩き、正面から好きな絵と見つめあうと、嵐のように胸がざわめく。でも、きらびやかな都市の中、美術館といううつくしい宝石箱に入った作品だけが芸術と考えるのはもったいない。
 芸術というのは、人と作品の出会いそのもののことだと、ぼくは思っている。
 東京を遠く離れた里山で出会う作品があってもいいし、もとをたどれば、作家が里山に出会って作品が生まれることだってあるだろう。そのありえない出会いを生んだのが「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2009」だ。
 街灯もまばらで人影も少ない、静かな新潟の里山をドライブしていると、突如としてアート作品が目に飛び込んでくるという異色のアートフェス。面白かった作品を数回の記事に分けて、ひとつテッテー的に紹介してみたい。

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草間彌生 / 「花咲ける妻有」
 まずはご存じ、草間彌生さんによる原色の花。穏やかな里山が夢に見たような場所に様変わりする。着いたときにちょうど雨が降っていたので、まるで朝露に濡れたような色味になっていた。

小沢剛 / 「かまぼこ型倉庫プロジェクト・かまぼこ画廊」
 つづいては読んで字のごとく、かまぼこ型の倉庫をモチーフにした作品。倉庫の中を覗き込むとオブジェが並ぶ。この倉庫、新潟の街中を走っているとよく見かけた。土木用の機材が入れてあることが多いよう。

イリヤ&エミリヤ・カバコフ / 「棚田」
 「松代農舞台」というエリアで一番の見どころなのがこれ。棚田に巨大な彫刻を置き、手前に短い詩を配したもの。目に見えている風景、そして見ている環境がそのもの作品になる。朝晩はもちろん、晴れや雨でも作品の姿は変わる。

イリヤ&エミリヤ・カバコフ / 「棚田」
 詩の内容は、四季の農作業を追ったもの。棚田では、時が経つに連れて変わっていく収穫までの作業を青から黄色へと色を変わる彫刻であらわす。ワイヤーで吊られ、風に吹かれる言葉と青い棚田が溶け合い、人の営みの力強さ、きらめきに打たれる。

白井美穂 / 「西洋料理店 山猫軒」
 ご存知、宮沢賢治「注文の多い料理店」に出てくる「西洋料理店 山猫軒」を再現したドアの群れ。1枚ずつ原作どおりの文句が書かれていて、最後には……。国立新美術館で開かれたアーティストファイル2008ではビデオを交えたインスタレーションとして展示されたもの。

島田忠幸 / 「里山アート動物園」内の作品
 林の中に突如あらわれる迷彩のイヌ。辺りに溶け込むようで溶け込まない、異形のイヌだ。古川日出男の傑物「ベルカ、吠えないのか?」を思い出す。

島田忠幸 / 「里山アート動物園」内の作品
(記事後半に続きます)

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佐藤修悦さんのサイン会にファン殺到

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ガムテープ書体「修悦体」で当サイトのタイトルロゴをデザインしてくれている、鉄道警備員兼タイポグラファーの佐藤修悦さん(詳しくはこちらの記事を参照)。個人のブログを中心に話題が集まっている。
先日、初の単行本「ガムテープで文字を書こう」(世界文化社)を上梓したばかりの佐藤さん。5月17日(日)、リブロ日暮里エキュート店で初のサイン会が開催されるというので足を伸ばしてきたところ、ものすごい人、人、人の海!
あらためてファン層の厚さに圧倒されながら列に並ぶことに。どんなサインを書いてくれたのかは、こちらから。

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「サイン会は初めて」と笑う佐藤さん。1枚1枚、ていねいに、じっくりサインを書いてくれる。
どのくらいの方が来ているのか店長さんに伺ってみると、予約の段階で40名、そこに当日、ぼくが訪れた時点で30名前後の方がいらしたとのこと。
「遠方から来られている方もいらっしゃるそうですよ」と言い、「作家さんのサイン会としては、最多規模の集客なんじゃないですか」と満足げに微笑んだ。
あらためて佐藤さん人気に驚きながら、サインの書きあがりを待つことに。

きゅっ、きゅっと一画ずつていねいにペンを滑らせる佐藤さん。
ガムテープで修悦体を作るときと同じ、真剣なまなざしでペンを進める。

これが出来上がりの「生・修悦体(?)」。丸っこくて愛らしい!
しきりと後ろから「かわいいー!」と黄色い喚声が飛んでいた。

会場には「時を楽しむ」という深遠な言葉を修悦体でしたためたパネルや、

京成日暮里駅(いささかわかりづらいのだ)までの地図であったり、

「(仕切りベルトに)寄りかからないようお願いします!」
とデザインされたパネルが展示されていた。
書籍は「ガムテープで佐藤さんと一緒に『修悦体』を作ってみよう」というコンセプトのもの。ただのアートブックではない温かみある内容で、佐藤さんの人柄がそのものあらわれているような一冊だ。
16時から開始したサイン会は17時30分まで列が途絶えることなく続いたそう。ほぼ休みなしに警備員と兼業しているという激務ぶりに体が少し心配になるけど、これからも修悦体を街中で見かける機会が増えてくれたら嬉しいなあと期待が膨らんでいく。
■関連サイト
ガムテープで文字を書こう(amazon.co.jp)

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工場、ダム、団地に共通のファンが生まれる理由

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石井哲さんの「工場萌え」、萩原雅紀さんの「ダム」、大山顕さんの「団地の見究」「ジャンクション」、そして佐藤淳一さんの「恋する水門」。
一定したジャンルとして名づけようがない、でも確実に共通のファンを獲得しているそれらの作家たち、作品たちを一冊にまとめたスサマジイ書籍「ドボク・サミット」が、武蔵野美術大学出版局から刊行されたのを知っているだろうか。
刊行を記念し、水門写真家の佐藤惇一さん、ランドスケープデザイナーの石川初さんのトークイベントがジュンク堂書店池袋店で開催された。一見まとまりのない「萌え」になぜ特定のファンが生まれるのか、石川さんはその理由を「物語」にあると語る。

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こちらが今回刊行された「ドボクサミット」。武蔵野美術大学で2008年6月に開催されたシンポジウムの「まとめ」を収録している。石井哲さん、大山顕さん、萩原雅紀さん、長谷川秀記さん、そして佐藤淳一さんという、いずれも奇妙な「萌え」で共通する5人だ。
中身は「ドボクとは何か?」を総体的に語るもの。その定義によれば「土木構築物のみならず、土木の特徴のひとつである機能性重視という性格を持つ建築物まで含めた領域を示すため、無理やり定義された表現法」。民芸的世界観である。

トークイベント会場の前にはそれぞれの作品がずらりと並ぶ。やはりこれだけ並ぶと壮観で、「書籍萌え」というのも候補に挙げたくなる。とはいえ特殊製本マニアはまた別のところにいるのだが。

今回の書籍刊行を記念して、オリジナルTシャツまで作ってしまったらしい。カタカナの「ド」の中に様々な萌え要素が入っているというかわいい1枚。

こちらは鉄塔をモチーフにしたトートバッグ。本気で萌える。

トークイベントは「ドボク・エンタテインメントと新景観」と題された。景観、サイトビューを新たな価値観から眺めなおそうという試みだ。

左がランドスケープ・デザイナーの石川初さん、右が水門写真家の佐藤淳一さん。石川さんがトークを担当して、佐藤さんがそこに突っ込んでいく形で話は進んだ。

「まずGoogleでドボクサミットを検索してみるところから話を」と石川さん。「ドボクサ、まで入れると“土木作業員 犯罪”なんかが引っかかってきますね」。危ない。実際、9万件も該当している。
石川さんは「団地萌え」をキーワードに語り、その写真から意図的に「削ぎ落とされているもの」について触れた。それは「こじゃれた意匠」であったり、下からあおった視線の撮影、あるいはフトンが干されたベランダやさわやかさを狙った色彩といったもの。

それがまとまっているものがあるという。何かというと、不動産広告なのだ。
不動産広告は「住む側に物語を売るもの」と石川さんは語る。マンションの広告は、そこに住むことで獲得されるライフスタイルのイメージを喚起する物語によって作られている。
「団地萌え」は、その広告機能をはぎとったところにあらわれるもの。いわば「物語の零度」としての価値を愛でる都市のフェティシズムなのだ。

工場やダムもそれと同様に「都市的なもの」からその機能を剥ぎ取り、観察の対象物としてのみ眺めたもの。それを観察することで、物語のない都市というどこにもないユートピア的な空間を楽しむのがドボクという「萌え」なのだ。
その意味で工場やダム、団地に共通する「ドボク」とは、都市を支える逆説的なリアリティと言えるだろう。「蛇口をひねれば水が出る」式に、なんか構造は分からないがそこにある都市的なもの。その複製芸術的な価値が、ファンを生む原点になっている。
石川さんはひとしきり講義を終えたあと、次の萌えとして「アスファルトにハマっている」と語っていた。これを機会に、自分なりの「萌え」を探すのもいいのではないかと思ってしまった。うーん、何かあるかなあ。

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アートフェア東京2009のすごい作品

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さとうかよ「私が何か間違えましたか?」 / 村越画廊
国内外のアーティストが集まり、アート作品をその場で売買できるアートフェア東京2009が、4月3日から5日までの3日間に開催された。
アートというと難しく考えがちだけど、思わず目を奪われる衝撃を持った作品にめぐりあうと、理屈よりもまずゾクゾクとした感動があふれだしてくるものだ。
そんなわけで、ゾクリと胸が震えた作品たちを写真で紹介していくことにしよう。
当たり前だけど、ここに出展しているギャラリーはほとんど入場無料。お気に入りの作家やギャラリーを見つけ、週末に散歩するなんていいんじゃないだろうか。

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野口哲哉「シャネル侍 着甲座像」 / ギャラリー玉英
まずは野口哲哉さんによる、全身がシャネルの甲冑を着た侍「シャネル侍」から。もともとは2007年のシャネルによる若手芸術家支援プロジェクト「現代アーティストたちによる LE MONDE DE COCO――ココの世界」で出展したものだ。

野口哲哉「シャネル侍 着甲座像」 / ギャラリー玉英
甲冑は細部まですべてがCHANELのブランドロゴで埋め尽くされている。

石黒賢一郎 / ギャラリー小暮
続いてはガスマスクをつけた肖像画を描く、石黒賢一郎さんの作品。
退廃美と政治性が強烈に匂い立つ。

ギャラリー小暮
「ローソクプレイのお客様へ」というギャラリーの注意書きもすごい。

池田朗子 / The Third Gallery Aya(大阪)
こちらは写真家・池田朗子さんの半立体の写真作品。
人が写った部分だけを立ち上げることで、ふしぎな感覚を呼び起こす。

池田朗子「光景 their site / your sight」(青幻社)
これまでも同様のモチーフで制作をしており、青幻社から刊行している作品集もある。

山崎史生 「静かな隣人」 / イムラアートギャラリー(京都)
どこかユーモラスなクリーチャーをオブジェとして生み出している山崎史生さん。
スズメの体に人間の頭をつけるなど、言葉で伝えようとするとおっかないけれど、
実際にオブジェを見てみると愛らしく、思わずさわってみたくなってしまう。

山崎史生 「静かな隣人」 / イムラアートギャラリー(京都)
この多面ブタ(?)の温和な表情ったらない。いきものが背負わなければならない絶望をやわらかく諭されているようにも感じられる。

三塚信「New Town」 / 野田コンテンポラリー
現役の建築家でもある三塚信さんが作った、日本の狭い住宅事情をシニカルな目線で捉えた作品。この鮮やかな黄色はすべて蜜蝋で出来ている。

三塚信「New Town」 [...]

佐藤修悦さんがワクテカしてくれた

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サイトトップを飾る「ワクテカ @works&technica」ロゴ。右下に書いてあるとおり、このタイポグラフィーは知る人ぞ知る佐藤修悦さんのオリジナルフォント「修悦体」だ。
新宿や東京、新橋などの駅構内で「三和警備保証」所属の警備員として働く佐藤さん。ガムテープを使ってJR新宿駅構内に案内板を作ったのがきっかけでそのフォントデザインが注目を集め、一躍時代の人となった。
案内板の制作に際して「見るべきものをしっかり目にとめるもの、分かりやすいものが一番」と語っていた佐藤さん。
そんな佐藤さんの書体なら、このサイトが目指している「見るべき人、知るべきこと、触るべきもの」を最も良く表してくれるはず。そんな思いから、ガムテープでサイトロゴのデザインをお願いした。ロゴ完成まで、一連の作成工程を追いかけてみよう。

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まずは採寸。全体のサイズからガムテープの長さや構図などを考える。

横顔は真剣そのもの。この角度が狂ったらすべてが壊れてしまう。

まずは横罫を引いていく。

続いて縦罫。ここで基本のカラーリングを決めていく。

「アルファベットは細かいね、入るかな」と楽しそうに貼っていく佐藤さん。

これですべての枠、フレーム部分は貼付終わり。

これが初めの状態。ここから何が出来るかまったくわからない。

当日も普段の警備服で来てくれた佐藤さん。腰には軍手がささっていた。

さらにテープを貼り重ねてこんな感じに。まだ何だか分からない…

完成イメージを脇に貼り付け、確認しながら作業を進める。

「ダブル、ダブル…オー、アール…」と声に出して確認しながらマスキングしていく。

これですべてのテープが貼付完了!

さてここからが本番、彫刻のように書体を削りだしていく。

こうだったものが、

こう削られていく。「ワクテカ」が見えた!

さらに細かいアール部をていねいにカッターで削り取り、

カタカナ部はこれで完成。「うつくしい!」と思わず声が出る。

さて続いてはアルファベット部へ。細かいので作業も慎重になる。

使用したテープは脇にとめてある。

丁寧に切り取っていき、

まずは縦横ともすっきりした状態に。

さらに細部を削っていき、アルファベットに整形。

もうだいぶ姿が見えてきた。ここからがラストスパート、細かい詰めに入ります。

「&がうまくいかない」とつぶやきながら進める佐藤さん。

何度も見直し、どんな形がいいかを細かく修正していく。

こちらもやはりアールをつけていく。

アールのこつは、とにかくていねいにカドを削っていくこと。

つ、とカッターの刃をいれる音が聞こえてきそうなほど。

少しずつ、少しずつの積み重ねでロゴデザインを作っていく。そしていよいよ…

ロゴが完成!!!

やっぱりポップで見やすく、読みやすい書体。
斜めから見ても格好いいです。

カメラに向かってポーズを決めてもらった。
佐藤さん、本当にありがとうございました。

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六本木はアート・シティの夢を観るか?

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森美術館や六本木ヒルズ、国立新美術館やサントリー美術館など、六本木が一夜限りアートの華を咲かせた「六本木アートナイト」。けやき坂のすぐ手前で炎を噴いていたジャイアント・トラやんについては既報のとおりだ。

開場すぐのオープニングアクトで、色とりどりのライトにアルミ製の巨体を輝かせるジャイアント・トラやん。バルカンサウンド+チンドンミュージックの音楽集団“チャンチキトルネエド”のライブアクトに合わせて炎を噴き上げ、会場を沸かしていた。
総勢45組のアーティストが参加した一大フェスティバル、見所は他にも沢山ある。いくつか紹介していこう。

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こちらは平野治朗さんの「《GINGA》@六本木」。
1000人の参加者が、淡く白い光を放つ風船を持って東京ミッドタウンの芝生広場に集まるパレードだ。サウンドデモならぬライティングデモとでも言うべきか、沈黙の中にほの光る明かりはささやかな祈りにも見える。ちなみにこの光は充電池eneloopを使用したものなのだとか。

こちらは森万里子さんの「プラントオパール」。
内側から照らすガラスの楕円状オブジェで、やわらかく光色が変化していく姿には、ほのかな希望を感じられる。プラントオパールとは、植物の細胞組織のこと。はるか縄文時代の稲作文化を“遺伝子”として伝えている化石、生命の結晶だ。人間のやわらかな進化をやさしく、しかししっかりと伝えている。

こちらは中谷芙二子さんの「霧の彫刻」。
横浜トリエンナーレでも三渓園に出展されていたため見たことのある人もいるはず。1979年の大阪万博以来作りつづける「霧」の姿は、30年が経った今でも変わることなく、人を「ここではないどこか」に連れ去ろうとしている。

藤原隆洋さんの「in to the blue」。直径8.5mの巨大アクリル製バルーンが頭上で回転しているという強烈なオブジェ。

観覧者はその得も知れないユーモラスな視覚に吸い込まれていく。

丸山純子さんの「泡花壇」。
海で収集したガラスや、不必要なスーパーの袋、日常からうち捨てられたトリビアルなものごとを拾い集め、華として再構成している。

高橋匡太さんのライティング・インスタレーション「カラーフィールド」。
独自開発のライティングモジュールを使ったパフォーマンスやインスタレーションに評価の高い、高橋さんの新作だ。墓標のように静的なカラーバーが六本木ヒルズに乱立し、鮮やかな光を放つ。

国立新美術館にも出展していたフォトグラファー、石川直樹さんの「3つのアートキューブ」。富士山を重くスタイリッシュに切り取ったFUJI、北極を撮ったPolarシリーズなどはあまりに有名だ。

彼が出展したのはニコンのF3、CANONのEOS KISS、フジフイルムのGM 645 ZI Pro、そして3本のフイルムの「化石」。写真もカメラも時間とともに風化する。だからこそ人間は写真を撮るのだ。

最後に紹介するのは浜野優輝さんの「春風のいたずら 2009」。キュウリやナス、ニンジンなどの野菜がカーテンの向こうを覗かせるというフェティッシュなもの。ばかばかしい連想から故・赤塚不二夫を思い出したのはぼくだけではない…はずだ。

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巨大ロボットが夜の六本木で火を噴く

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「ヤノベケンジ」でググると、まずはもちろんWikipediaが出てくる。けど、彼の仕事はウェブやテレビ映像の一次情報だけで判断できるものではまるでない。
明日、1晩限りで開催されるアートの祝祭「六本木アートナイト」に出展される、火を噴くロボット型オブジェ「ジャイアント・トラやんの大冒険」もその1つだ。

能書きは後に回すとして、まずはこの巨大なものが実際に六本木で火を噴いた様子を動画で見てもらおう。

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「ヤノベの息子の音声だけを認識して行動するロボット」という役割を演じる全長7.2メートルの巨大オブジェは、実際に戦闘機に使用されていたミサイルポッドを背負っている。

その異様なまでの巨大さ、「口元」から発せられる鳴き声をサンプリングした轟音、そして火炎が残していく匂いの痕跡。それはいずれも技術の可能性と、「戦争」に向かいつつある危うさとをそのまま体現している。
ゴジラ、そしてゾンビなど「映像」が暴力を代替してきた時代が過ぎ、現在は映像同士をネットワークでつぎはぎし、虚構のアイドル(共有幻想)を生むボーカロイドの時代になった。

ネットワーク上で誰のものでもない音声と誰のものでもない映像をマッシュアップして「現実・のようなもの」を作っていく新たなリアリティーは、つるりと透明で、ざらりとした存在がどこにもない。
それと対置されるのがヤノベの「虚構・のようなもの」だ。その圧倒的な存在感はたしかな対象としてそこにある。それを肌身に感じ、考えたことを明日への糧にしてほしい。

■六本木アートナイト
2009年3月28日(土)10:00-3月29日(日)18:00
六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、国立新美術館、サントリー美術館、六本木エリアの一部公共スペースおよび協力施設
入場無料(一部プログラムは有料)

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