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なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか

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【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
第3回 「ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?」 4月9日
第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

荻上チキさんに、これまでとこれからの「炎上」の構図について伺う短期連載。最後は日本人という国民性に迫る。
日本ではプライベートな事柄を記したブログからの「炎上」、また政治家の発言などからいくつも「祭り」が起きた。そこからは公共的な「議論」が生まれづらくなっているように思える。
その理由について伺うと、「公共的なもの」よりも、「共像的な情緒」を重要視することが多いためと荻上さんは分析する。一体どういうことなのだろうか。

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―― 最後に、日本独自のように思える「情緒を共同する≒空気を読む」感覚についてお伺いしたいと思います。
 その感覚はウェブ/リアル相互のコミュニケーションにどんな影響を与えているのでしょうか。なぜ日本では「Twitterからブログが炎上」してしまい、アメリカでは「オバマ大統領がTwitterで広報活動」をできるのか、その違いはどこにあるんでしょう。
 また、2000年代から日本人の「承認欲求」、誰かに認められたいという強い欲求が急速に高まったとされています。その志向は確かに日本のネット文化そのものにあらわれているように思えます。承認欲求と、現在の社会倫理の関係性について、あわせてお聞かせください。
荻上 まずはウェブ以前に「どういう政治行動に対してインセンティブが働きやすい状況にあるのか」というところに違いがあるでしょう。
 また、様々な属性を紐帯可能な「公共的なもの」を討議する振る舞いよりも、「中間層」の領域を分厚くするために「共像的な情緒」を監視する振る舞いの方が機能しやすい。それが「日本独自」かはさておき、相対的な傾向とは言えるでしょう。
 また、ネット上の言説を、「何へのカウンター」として意味づけているかによっても、その行動のトレンドは変わるでしょう。日本の場合、サヨクと位置づけられた「マスゴミ」に対するアンチという物語が共有されやすい。
 日本ではずっと自民党が与党で、実際自民党支持者が多かったわけですが、権力を監視する役割を担うマスメディアは、そうした政治に対するカウンターとして「左」にまわっていた。そのマスメディアへのさらなるカウンターとして位置づけるがゆえに、「炎上」的なものが目立つのかもしれない。
 そうだとしても、それをどう評価するのか。アメリカ的なものが「あるべき姿」で、日本は「半開=半壊」の状態たと位置づけるのか。
 僕は日本では、日本のリソースを使って「政治」をしなくてはならない以上、まずはその核となっている前提条件を露にするのが重要だと考えます。ウェブ上の集合行動を分析し、比較することも、そのための示唆を与えてくれるでしょう。
 「承認欲求」が急速に高まっているかどうかは、僕には分かりませんし、なかなか実感もわきません。
 それより高まっているのは、生活への希求だと思うので、まずはまっとうな経済学思考に基づいた、経済政策と貧困問題の手当てをしたほうがいいのではないかと思います。って、どんどんネットの話からずれていますが(笑)

【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
第3回 「ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?」 4月9日
第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

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ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?

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【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
第3回 「ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?」 4月9日
第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

荻上チキさんに、これまでとこれからの「炎上」の構図について伺う短期連載。第3回はニコニコ動画で盛り上がりを見せる、炎上とは異なる「政治運動」、そしてそこから発展する「祭り」の流れだ。
いつの時代も同じことだけど、ただボリュームが大きい大衆先導・アジテーションにウマウマ乗せられるわけにはいかない。まずは本稿で現状確認から始めていこう。なぜYouTubeではなくニコニコ動画で「祭り」が盛り上がるのか、その構図を聞いた。

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荻上 ニコニコ動画では、政治的なネタもそこそこ盛り上がっていますね。方法論自体は、役割としては旧来のまとめサイトと変わらないんですが、機能の面での違いがあらわれてきます。
 ネット住民がマスコミの偏向報道を批判するとき、マスコミに対して「公式MAD」と揶揄することがあります。「現実から切り取った画像からMADムービーを作っている」という意味ですね。

ニコニコ大百科より「マスコミ用MAD素材」項目
 そういう言葉をわざわざ選択するように、ネット上の政治動画の多くも大体がかなり「偏向した」MAD動画なわけですが、それ自体は多くの「まとめサイト」も同じです。
 いずれも確証バイアス*1 が非常に高く「公正」であるとはお世辞にも言えないものの、ある結論へと自ずと導きやすいような「争点」を作ろうと計算されている。
 「MADでMADに対抗する」ということ。それは、ハイパーリアリティをめぐる抗争に、動画が使えるようになったということですね。それは当然プロパガンダや情念の闘技にも利用され、特定団体の政治活動行動の元で拡大・再生産されてもいます。

 こうしたMAD文化の文法は、古典的な物語やアジビラのような政治手法、流言の構築プロセスなど、これまでの集合行動による「共像」*2 構築のプロセスと非常に似通っていますね。
 MAD文化の例としては、「初音ミク」のようなケースばかりが好まれて語られがちですが、そうした観察の言葉が、麻生応援PVや「頭がパーン」による創価批判のような、具体的政治や排除につながるようなケースを一切無視し、「文化的可能性」とかを無理やり論じようとする「解釈ごっこ」で終わっているのは非常に残念です。

「頭がパーン」タグの付いたMAD動画の一例
 どのようにバーチャルに見える世界でも、政治や経済といった環境的条件や、剥き出しのコミュニケーションからは逃れられません。
 よく言われているように、ニコニコ動画は、感情の共有には向いているけれど、議論には向かない。特に動画であるがゆえに、それ自体はアジテーションには使われやすいけれど、ディスカッションにはあまり向きません。
 YouTubeと違って、匿名による短文コメントしか表示されにくい。だからニコニコ動画に上がっているMAD動画に匿名で反論しても効果がほとんどない。匿名空間で積極的に付和雷同する自体を「作法」として楽しむ空間だからこそ、水をさすようなコメントはあっさりスルーされる。
 そこには単に「扇情的/理性的」といった対比で済ませることは出来ない、独自のゲームのルールが働いているんです。

  先日「ニコニ広告」がリリースされたことで、政治動画がランキングに入りやすい環境も作られました。琴線が絡まるとこういった「工作」も加速するんじゃないかなとは思います。
 意図的なもので言えば、たとえば「頭がパーンで100位全部埋めよう(parn100)」のようなことは今までもずっと続けられてきたわけなので、これからも続いていくんでしょう。
 ある種のエコチェンバー(自分に都合のいい言説だけを選択し、多くの人と同調することで声を大きくしていくこと)の持つ快楽性は、なくすことは不可能ですから。
*1 確証バイアス: 先入観から他者を観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて先入観を補強する現象のこと。
*2 共像: 特定の情報の集積によって生まれる共通のイメージ(像)のこと。
(4月10日予定 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 に続きます)

【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
第3回 「ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?」 4月9日
第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

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mixiオープン化で炎上は変わるか?

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【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
第3回 「ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?」 4月9日
第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

荻上チキさんに炎上の基本と今後を聞いていく短期連載。第1回のTwitterに続き、第2回ではオープン化を表明したmixiについて聞いた。今後、ペルソナごとにコミュニケーションの方法を変更していくというプランを打ち出したmixi。コミュニケーションのプラットフォームが変わることで、炎上は回避できるのだろうか。

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―― 炎上の鍵となったmixiは、今期中に社会内人格(ペルソナ)ごとにコミュニケーションの方法を設定するという方針を掲げています。友人同士なら「日記」ですが、社会人同士なら「日記以外」で、というものです。そのように複数のペルソナを同時に使い分けることで何か変化はあるのでしょうか。
荻上 実物を見ていないのでなんともいえませんが、話だけを伺っていると、基本的にはこれまでのmixiの方法論と変わらないように聞こえます。ユーザーのニーズに合わせ、棲み分けを可能にし、複数のコミュニケーションを円滑にすること。
 そうした「ネット上での人格を様々に使い分ける」ということに関して言えば、ぼくたちは日常生活でも様々なコミュニケーションのモードやキャラクターを使い分けているわけで、それをネットでもスムーズに可能にした、ということなのでしょう。

 たとえば恋人と一緒のときは、「大好きだにゃー」とかネコ語をしゃべる男女がいても、親の前では当然そんな話し方はしないわけですよね。
 そうして恋人に対して「つぶやいた」言葉を親に聞かれたらこっ恥ずかしいので、コミュニケーションのチャンネルを棲み分ける必要がある。身近な、小さな「炎上」も避けなくてはならないわけで。
 ただ、注意しなくてはならないのは二つ。
 ひとつは、棲み分けが可能になるということは、コミュニケーションの断絶を意味するのではありません。現実がそうはさせないからこそ、特定のコミュニケーションをより円滑にするためのツールとして、ネットが活用されている。
 もうひとつは、システム上で棲み分けが可能になっているからこそ、「越境」する際にはこれまで以上の「空気リテラシー」が求められていること。たとえば炎上対策が可能になっている状態だからこそ、個人のミスで炎上したことが、「自業自得」的なムードも高まりやすくなります。
 日本のSNSが海外のそれと違うように、どのようなアーキテクチャも、使用される文脈によって意味が変わることを覚えておいてください。たとえばオバマ政権はTwitterを使って政治広報をして、多くのフォロアーを獲得した。しかし、日本ではそうなりそうにない。
 匿名空間で野次るか、親密圏でつるむかといったユーザニーズがそこには存在しているのでしょう。
(4月8日予定 「荻上チキが語る、ニコMADと政治運動・祭りの構図」 に続きます)

【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
第3回 「ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?」 4月9日
第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

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Twitter時代の炎上論

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【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
第3回 「ニコMADと政治運動・祭りの構図とは?」 4月9日
第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

mixiの登録ID数は1630万を超え、ブログの日記、Twitterのつぶやきといったネット上でのコミュニケーションは、ぼくたちデジタル世代にとっては電話をかけるのと同じように当たり前のものになった。
ただし電話の場合と異なるのは、ネット上のコミュニケーションにおいては言うまでもなく、不特定多数の見えない相手がいることだ。それを象徴するのが、個人的な事柄を発端とした「議論」が一挙にネット内で膨れあがってしまう、炎上のケースだ。
炎上はゼロ年代の爆発的なコミュニケーションツールの進化とともに生まれてきた。TwitterやTumbler、また小規模SNSなど様々なツールが増えていく中、ネットで「炎上」の形はどう変わっていくのだろう?
「ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性」(ちくま新書)の荻上チキさんに、炎上のこれまでと今後について聞いた。

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―― 今回お伺いしたいことを端的に言うと「これからもコミュニケーションは炎上しつづけるのか」ということについてです。TwitterやTumbler、またオープン化を表明したmixiなどコミュニケーションツールそのものが新しくなっていくことで、炎上という「運動」の姿はどう変化していくんでしょうか。

荻上 結論から言えば、ウェブ上に自由なコミュニケーション空間を確保し続けるなら、これからも「炎上的なもの」はなくならないでしょう。人がコミュニケーションを行う限り、そこにノイズは必ず発生しますし、人はそれを楽しみ続けるでしょう。ウェブ上でも、それはこれからも変わらない。
 元々ウェブ上では、人々の口コミや流言が可視化されやすい。そうした言説が雪だるま式に重なっていく動きを、その対象やケースに応じて「祭り」といったり「炎上」と表現したりするわけですが、それを人為的に止めるのはたやすいことではありません。
 本人への罵倒などについては、コメント欄などを設けなければストレスを受ける可能性も下がるでしょうが、ネット上だけで完結されないような、企業などへの「電凸」*1のようなケースではそうもいかない。

 多くのユーザーは、「2ちゃんねる」のような匿名空間や、ブログといった顕名的なサービスを使って「よそ様向け」にコミュニケーションをするのではなく、「mixi」を象徴的に、「親密圏」*2 のメンテナンスツールとしてネット空間を使っています。
 そのとき、mixiという親密圏で発言された内容を、2ちゃんねるなどから観察する人に「誤配」され、攻撃の対象とされてしまうというのが、よく見かける炎上のパターンでした。本人としては読者層を意識せずに発言した、いわば「失言」、たとえば喫煙・飲酒などの違法行為を披瀝する「犯行自慢」などがそれにあたります。
 Twitterで炎上する場合も基本的にはこれと同じケースになるでしょう。Twitterは外部へのつながり性は低いので、炎上の事例はまだそう多くはありません。
 たとえば「はてな」の取締役である梅田望夫さんが水村美苗「日本語が亡びるとき」を自分のブログ上でレビューしたとき、はてなブックマーク上でネガティブなコメントがたくさんついた件は記憶に新しい。
 そのコメントを読んだ梅田望夫さんがTwitter上で「はてブのコメントには、バカなものが本当に多すぎる」と発言したことでさらに燃料が投下されたというものです。

 ただ、これはTwitterでなくてもよかったわけですよね。その意味で、Twitterが炎上のケースに関わることはあったとしても、その誘発の仕方が変わるというよりは、ただチャネルがひとつ増えただけと言えるでしょう。
 Twitterそのものは元々、身内同士が親密圏で発言しているもので、検索可能性もそれほど高くない。ブログとチャットの中間のような、「ゆるい」サービスであるがゆえに、元々ストレスフルなコミュニケーションが避けられがちな空間です。
 ブログにも疲れ、mixiにも疲れ、本当に分かった身内同士で「キャッキャウフフ」したい、やや高アンテナ、高リテラシーな層がTwitterにやってくるという印象もある(笑)。だから、ワンオブゼムのチャンネルにしても、「炎上係数」自体は割と低めだと思います。 
 
*1 電凸(でんとつ): 特定の組織あるいは団体に電話をし、活動内容について「組織としての意見を問いただす」行為をあらわすネットジャーゴンのこと
*2 親密圏: 「親密な関係」を基本理念とした、他者を含む環境のこと
(4月7日予定 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 に続きます)

【短期連載】荻上チキが語る、炎上の構図
第1回 「Twitter時代の炎上論」 4月7日
第2回 「mixiオープン化で炎上は変わるか?」 4月8日
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第4回 「なぜアメリカでは“オバマ”で、日本は“炎上”なのか」 4月10日

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