Moebius 「Les Yeux du chat」
## 原正人の「なぜ私はヨーロッパマンガを愛するようになったか」
「こんな時代だからアクセスできるけど、気軽に手を出すにはちょっとよくわからん」というマンガを深追いする連載企画。フランスマンガ研究家の原正人氏が、いまだ知られざるヨーロッパマンガの魅力を隔週金曜日にどっぷりと紹介していく。
前回の連載で書いたように、5月3日から10日まで世界の巨匠メビウスが来日した。前回の来日からもう6年、都合4度目の来日とのことだ。
今回はせっかくなのでもうしばらくメビウスにつきあってみたい。記事後半では筆者お勧めの2冊を私家版訳として「日本語で読める」状態で紹介する。
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京都国際マンガミュージアムでのライブパフォーマンス(メビウスがクラブ・ミュージックに合わせて、踊りながら絵を描いてくれたとのこと)をはじめ、京都精華大学の講演、メビウスの誕生日パーティー、明治大学のシンポジウムと実にさまざまなイベントが行なわれた。
講演やシンポジウムの様子は多くの方々がブログなどで報告してくれているので、そちらに譲ることにしよう。メビウスはそれぞれのイベントで絵を描いており、明治大学でのパフォーマンスの様子はこちらの動画で見ることができる。
メビウスは、同行した奥さんともども、どうやら今回の来日を大いに楽しんでくれたらしい。お世辞かもしれないが、できることなら今回のような短い滞在ではなく、しばらく腰を据えたいと言ってくれた。願わくはそれが現実のものとならんことを……
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それでは作品の話に移ろう。日本での単行本は「謎の生命体アンカル」が1986年に講談社から訳出されただけで、それ以外に日本の出版物でアクセスできるのは挿絵や表紙絵を除けば、かつて「スターログ」に掲載された2つの短編だけである。
要するに非常にお粗末な状況なのだが、この5月末に飛鳥新社から「B砂漠の40日間」が出版されることになった。この本は10年ほど前、メビウスが60歳の時に描いたもので、とてもじいさんが描いたとは思えない奔放なイマジネーションと超絶技巧が今見ても驚異である。
元来セリフのない作品なので、輸入版でもいいんじゃないのという話はあるだろうが、巻末に最新のインタビューが付されている。まあ、何より日本国内で出版されるということが重要だろう。
これを機に今後メビウスの翻訳が増えることを祈るばかりだが、こんなのどうよという提案の意味を込めてここで2つ作品を紹介してしまおう。まずはホドロフスキー原作の「Les Yeux du chat」(「猫の目」)、1978年の作品である。
どことも知れぬ廃墟めいた巨大な石造りの都市。繁栄の様子は伺えるが、路上には人っ子一人おらず、不気味な静けさが漂っている。高い建物から窓外を見やり、何かを待っている様子の男が一人。不意に雲間から日差しが差し込み、そこへ一匹の猫が姿を現わす。恐る恐る歩みを進める猫。と、上空から一匹の鷲が猫に襲いかかり、その目を奪い、どこぞへ飛び立っていく。彼が向かったのは……
Moebius 「Les Yeux du chat」
とまあ、こんな話。すばらしいのはその構成で、この作品はコマ割りなしの一枚絵の連続で話を進めていくのだが、見開きの左ページ(窓外を見やる男)と右ページ(猫と鷲)でまったく関係のない話を進めつつ、最後にはその二つの話が見事につながることになる。
もう一つは「Tueur du Monde」(「世界殺害者」)という、こちらは1979年の作品。こちらも一枚絵で話が進んでいくのだが、「猫の目」ほどの語りの工夫が見られるわけではない。
が、愛らしいイラストと奇妙なSFテイストのストーリーが相まって実に魅力的な作品となっている。
内容は、宇宙飛行士フィルドガールの惑星バル=ジョナへの寄港、および巨大きのこクルバラガンタとの出会い、そしてその後の顛末を語るもの。
Moebius 「Tueur du Monde」
……どこか出しませんかね?
text by 原正人
## 原正人の「なぜ私はヨーロッパマンガを愛するようになったか」
「こんな時代だからアクセスできるけど、気軽に手を出すにはちょっとよくわからん」というマンガを深追いする連載企画。フランスマンガ研究家の原正人氏が、いまだ知られざるヨーロッパマンガの魅力を第1・第3金曜日にどっぷりと紹介していく。
第1回 「荒木飛呂彦と宮崎駿の共通点は?」 (4月3日)
第2回 「エンキ・ビラル最新作『アニマルズ』を読む」 (4月3日)
第3回 「フランス漫画の巨匠・メビウス来日!」(5月7日)
第4回 「フランス漫画の巨匠・メビウスを「日本語」で読む」(5月22日)
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